浮世絵「葛葉狐」(クズの葉きつね)幼き安倍晴明と母親の涙の別れの場面ですゾ!

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安倍野に住んでいた安倍保名は、信太の森の稲荷神社に毎日通っていました。そこで狩人に追われる白狐の姿を目にし助けてやります。しかし、安倍保名自身が狩人との争いで怪我をして意識を失ってしまいました。  しばらくして安倍保名が目を覚ますと、美女に手当をされているところでした。美女は葛葉と名乗ります。葛葉は怪我をした安倍保名のもとに通って世話をしました。やがて二人の間に恋心が芽生え男の子・童子丸が誕生します。  童子丸が5歳になったある秋の日、葛葉は添い寝をしているうちに神通力を失って白狐の姿を童子丸に見られてしまいます。葛葉は筆を咥えて障子に一首の歌を残して信太の森に帰ってゆきました。 「恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる 信太の森の うらみ葛の葉」 葛葉が去った信太の森には葛が生い茂っていました。因みにうらみとはこの場合未練の意味です。  残された童子丸は母が置いて行った宝玉を見つけ陰陽道を修め、数年後安倍晴明と名乗って天皇の病気を治し朝廷で出世を重ねます。  安倍晴明の母・葛葉の伝説が残る場所は大阪にあります。 信太の森は現在の和泉市にあたり、伝承にある神社・信太森葛葉稲荷神社も現実にあります。そこでは、葛葉は神使の狐としてではなく、1柱の神様として信仰されています。  この作品は今まさに悲しみを堪えて別れの歌を描いている葛葉の姿と後の何も知らない安部清明が描かれている最高の見せ場なのです。  この作品はには作者の名前が書かれておりません。有名な歌舞伎の演目ですので多分三部綴りの一枚と思います。三部綴りのできる絵師、筆感から言って香蝶楼豊国の作と思われます。  「恋しくば 尋ねきてみよ 和泉なる 信太後の」まで書いたところの中村芝翫を描いた作品です。当時の江戸の人たちにはたまらなくしびれる一瞬だったのでしょう。  当品には裏打ちはしてありますが作品自体には滲みも破れも無くとてもクリーンで美しい出来栄えです。写真4は裏側です。     縦6.7cm 横25cm  前述のように歌舞伎では有名な演目ですのでその道の知識人に聞いてみてもよろしいかと存じます。  こういった浮世絵版画は時と共に市中からは姿を消しつつありますので是非今の内に少しずつでもと思います。                  hide

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